ー2010年12月某日 夜ー
arto「キラ☆キラ、最高のソフトだったな〜。次はSWAN SONGをやってみるか・・」
ゲーム起動・・・
arto「沙耶の唄と同じく綺麗なタイトル画面。そういや、沙耶の唄には開始10秒、こなたよりかなたまでには開始10分で驚かされたっけ。まあ、そんなソフト、そうそうあってたまるかっての!」
ゲーム開始・・・・・・・・・・
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・・・・・・・
ー開始1分ー
arto「えええーーー!またいきなりですかーー!」
ということで、今度は開始1分の急展開。本日はそんなSWAN SONGの感想です。
シナリオ
雪が深々と降り積もるクリスマス・イヴの夜、とある山奥の地方都市を大地震が襲う。街は一夜にして雪と瓦礫と死臭に覆われ、辛うじて生き延びた若者たち6人は倒壊を免れた教会で出会った。身を寄せ合い、容赦なく押し寄せる現実を受け入れながら生還の手立てを模索する彼らは、やがて行く手を阻むように水没した街を筏で渡り、彼ら以外に生き残った人々が避難する学校へと辿り着く。その後、彼らに待っている運命とは・・・?
・まず、面白かった〜!熱中度、先が読みたい度はかなり高いです。開始1分の急展開から、6人で教会に生活するようになり、次は学校へ・・・。大地震後の生活がどうなっていくのか?最後はどう終わるのか?が気になって、最後までnonブレーキでした。
それにしても、またこの急展開かと。2度あることは3度あると。開始1分で大地震が起きて街が崩れ去ります。もう開幕の急展開には慣れました(ウソです、驚きましたw)。この時、まだ主人公の名前も出てないんだぜ。
・このゲームで感じたことは「極限状態で人間はどうなってしまうのか?」です。「人間の相手は人間だよ」とどっかの冬月副指令が言ってた気がしますが、このゲームの後だとそれを本当に実感します。
大地震後の世界では、社会が成立しなくなり、盗み、殺人、強姦といった無法地帯になってしまいます。こう考えると警察がきちんとした現代の秩序は大切だなと。
しかし、秩序が行き過ぎても怖いです。ゲームでは学校に自警団を作り秩序化するのですが、その権力は増大していき、逆らったものを殺す、別集団を殺戮、強姦するという恐怖政治、絶対王政になります。
最終的には学校も滅んでしまうのですが、大災害があったらどうなるのか?社会が機能しなくなったらどうなるか?を考えさせてくれました。女神転生的に言うと、トルーマンもダメ!ゴトウもダメ!左翼も右翼も行き過ぎるとダメ!ニュートラルルートが一番だ!と言うことだと思います。このバランスが大事なんですよね。
・また、「極限状態」は表向きな主張で、裏には「人生の理不尽、それによって絶望した人たち」が描かれていると思います。司、鍬形、そして柚香と・・。登場人物は様々な事情で心のどこかが欠けている。その者たちが極限状態の中で、どういう風に考え、どういう道に進むのか。
その心理描写が非常に秀逸で、いや、秀逸過ぎて深すぎます(マジ)。私も全部は消化できていません、深すぎて。キラ☆キラで伝えたいことと共通する部分はあると感じてますが・・。ここまで心理描写が凄いと感じたゲームは初めてです。
・あと思ったのは、ノーマルエンドが一番の主張だと感じました。トゥルーエンドは言わばメインディッシュ後のデザートのようです。キラ☆キラもそう感じたのですが、瀬戸口さんの手法でしょうか?ノーマルエンドの最後、あろえが直した像を立てるくだり、私の心に響きましたよ。。。
システム
・ビジュアルノベルと一言で片づけたいですが、ちょっと変わってます。キャラの立ち絵がなく、かわりに喋るキャラの顔CGがメッセージの近くに出ます。また、画面右半分がCG、左半分が文章。とか、下、上で分割したりで文章とCGの位置が結構変化して面白いです。少しPSの「シルバー事件」風味。一枚絵もあります。通常のビジュアルノベルより文章に集中出来たと思います。
加えてこのゲーム。視点が色々変わります。主人公の司だったり、田能村だったり、鍬形だったり。変わりながら物語が進みます。それにより、キャラの心理がプレイヤーにうまく伝わってくる。
テキスト
・キラ☆キラと同じく瀬戸口廉也さん。飾らない、自然体な文章で個人的にすっごい分かりやすい。たまに入るインテリ風なクスッと笑えるユーモアが好き。そして飛び抜けた心理描写。キラ☆キラとこの作品で私のお気に入りライターになりました。
それにしても、瀬戸口さんの絶望、トラウマを持った人の描写は凄い。どうしてこんなにリアリティー溢れる描写が出来るのでしょう。あなたはどこの出身だ?幼少時代の代表的な思い出はなんなんだ?と声を大にして問いつめたい。勝手な想像ですが、辛い子供時代を過ごしてきたのではないでしょうか?
グラフィック
・ビンゴッ!原画は川原誠さんですか。存じてないですが、女性キャラが凄くイイ。気に入りました。個性がある絵なので好みが分かれると思いますね。塗りも綺麗でした。
音楽
・もう素晴らしい!作品と合っているとはこういうことを言うのでしょう。無音も有効に使っています。特に好きなのはタイトル画面の音楽。キリスト教を感じさせるような綺麗な曲。でも途中から不穏な感じで壮大なメロディに・・・。SWAN SONGはこの音楽以外は認めん!お前を息子とは絶対に認めん!(意味不明)
ただ、2つのエンドロールの音楽は少し不満です。個人的にはもっと切ない、悲しげな音楽で締めて欲しかった。。
ボイス
・文句の「も」の字も出ない。非常に高レベル。司の声、優しく落ち着いた声でステキ過ぎる。
エッチシーン
・瀬戸口さんの表現力か、それまでのキャラ描写が秀逸なためか、延髄蹴りを食らうかのごとく脳天にきます。シーンが少ないのが残念。
特に印象に残っているシーン
・瀕死の姉とあろえとの出会い
序盤からきっっつい展開だと思いました。大地震の残酷な仕打ちと、周りの状況が分かってない自閉症のあろえ。この対比は精神的にきました。エヴァ新劇場版破の3号機虐殺と「また逢う日まで」の対比と同じ匂いがしました。
・3−4 柚香とのエッチ後、司と柚香のやりとり
すっごい鳥肌立った・・・。なんで瀬戸口さんはこんな複雑な人間の心理を表現で(ry。
お気に入りのキャラ
・佐々木柚香(クリックで関連ページ)
初登場で気に入りました。可愛い!声がいい!性格は・・・複雑・・・。この子、この作品の影の主人公だと思っているのですがどうでしょう?
・田能村 慎
男性キャラは頭に残らない性質なんですが、こいつは例外。この作品で一番まともだと思う。見た目はちゃらそうだが、優しく争いを好まない。バランス感覚に優れるイケメンです。雲雀に告白したシーン、カッコ良すぎ。
このゲーム、心理描写が秀逸なので全てのキャラに愛着が湧くんですよね〜。雲雀や妙子も可愛くて好きだし、鍬形は最後の方、「紅蓮腕(ぐれんかいな)」とか使いそうだし・・・。(笑)
まとめ
・最初から最後までずぅーと引き込まれた作品。
ストーリーもそうですが、登場人物の心理描写が秀逸過ぎて、このゲームをしてる時、息を吸ってなかったと思います。それはウソですが、息を吸うのも忘れるくらい熱中してました。圧倒されっぱなしでした。
まわりを支える音楽やグラフィック、声優なども非常に高水準でまとまっており、全てが組み合わさって素晴らしいソフトを作っていたと思います。
そして、心理描写を含めたその世界はあまりにも深く、1回では味わい尽くせない作品。これは称賛の言葉ですよ。味わい深いということは素晴らしいことですし。箱の中には秀逸かつ深ーい世界があり、たまに開けて見たくなるオルゴール箱のような作品です。
ノーマルエンドの最後。司の想いは柚香には解らない。そして、司は「ピアノがあれば柚香を笑顔にさせられるのに」と考えているが、決してピアノでは柚香は喜ばない。このハリネズミのジレンマのような2人のすれ違いは本当に悲しい。
それでも、司が人生を賛歌出来た姿はとても美しかった。悲しさを吹き飛ばすくらい素晴らしいことだった。。 考え方が違う2人でしたが、中には分かりあえた部分もあったはず。そう思いたいです。
非常に悲しくも美しい、至高の作品。この作品に出会えて良かった。
この作品から一番感じたメッセージ(ノーマルEND)
「人生は無慈悲、理不尽。人の一生は歪でゆがんでいるかもしれない。人は完全に分かりあえないかもしれない。それでも、その人が精一杯生きた一生は美しく、人生は素晴らしいものだ」
(2010年12月25日 記載)